シャボン玉の回想
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幼いお嬢さんが、ふうと息を吹き入れることでわたしは生まれました。わたしは他の仲間と比べると大きくはありませんでしたが、お嬢さんは生まれたてのわたしたちを見てたいそう喜んでくれました。わたしは少しでも目立つように自分の見え方を工夫しました。それは光の弾き方や彩色をわたしなりに良く見せようとしたのでした。そうして漂っているうちに、わたしの視線とお嬢さんの視線とが出会ったのです。お嬢さんは吸い寄せられるようにわたしのほうへ手を伸ばして近づいてきました。するとお嬢さんの瞳にわたしが映り込んでいるのが見えたのです。そのときお嬢さんは、お嬢さん自身をわたしのなかに見てくれたでしょうか。
風が私を遠くへ飛ばしました。お嬢さんの小さな手は空をつかんで、とうとうわたしに触れることはありませんでした。悲しくはありません。それきり風となったわたしは、彼女の頬を過ぎるたびに彼女を郷愁で満たせてやれるのだから。
風が私を遠くへ飛ばしました。お嬢さんの小さな手は空をつかんで、とうとうわたしに触れることはありませんでした。悲しくはありません。それきり風となったわたしは、彼女の頬を過ぎるたびに彼女を郷愁で満たせてやれるのだから。
その他
公開:24/09/01 18:26
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