アンインストール

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「実験は失敗だった。自らアンインストールしてほしいって頼んできたんだよ。恋心なんて知りたくなかったと言いながら」

友人のリサはおもむろにコーヒーカップを手に取る。ひと口、ふた口――ゆっくりすすると、物憂げなため息を落として言った。

「わかるわ、彼女の気持ち。恋は胸を押しつぶしてしまうものだから。きっと怖くてたまらなかったのよ」
「僕だって、好きでロボットに人間的な感情をインストールしたわけじゃないんだけどな」
「需要があるから仕方なく?」
「知っていたなら、友人としてフォローしてくれてもいいだろ?」

リサは残したコーヒーを見つめながら立ち上がった。

「できることなら、私の記憶からもあなたをアンインストールしたいわ」
「それは友人を辞めるってことでオーケー?」
「そうね」

リサとはそれきり一度も会っていない。
言葉に隠された意味に気づいたのは十年後のことだ。
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公開:24/09/02 08:24

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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