泡グラス

2
4

そのグラスは見た目が可愛くて気に入り買ったのだけれど、思いがけない機能がついていた。水でも、お茶でも、オレンジジュースでも、注いだ液体に近い色をした泡が生まれ、飲む前に2〜3個、飛んでいくのだ。

それだけと言えばそうなのだが、特に昼下がりに飲むと、泡が陽に当たりキラリと光り弾ける様が、何とも愛らしかった。

夜。例のグラスで晩酌のビールを飲んでみた。陽の光の代わりに部屋を暗くして、キャンドルを灯した明かりで飲むことにする。

グラスにビールを注ぐと、さーっと泡立ち、みるみるうちに増え、何百、何千もの細かい泡が飛び出した。

白い泡はすぐに消えなくて、私の頭上くらいで渦を巻いた。暗い中、炎に照らされた泡は、まるで銀河のよう。その泡は少し吸い込むと、口へ飛び込んできた。それは極上の料理のような味がした。

ただし弊害もあった。

次の日しばらく頭の中で、泡がパチパチ弾ける音が鳴り響いていた。
その他
公開:24/09/01 23:32
更新:24/09/01 23:45

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容