バブル

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「典型的なバブルの兆候。早晩弾けるに違いないぞ」
 男がカフェのテラスでコーヒーを飲んでいると、近くで誰かの講釈が聞こえてきた。
 今の株価にしろ仮想通貨の価格にしろ、バブルと思われる形跡は一切ないと男は胸の中で断じた。強いてあげるなら金価格は上がり過ぎかもしれないと胸の中で補足しながら男は声のした方を見やる。見知らぬ爺さんが1人席に座りながらぶつぶつ呟いている。
 過去に相場でやられたトラウマだろうと結論づけた男は、明日は我が身だと心の中で笑った。男がコーヒーに集中しようとしたその時だった、突然空が暗くなった。雨でも降るのかと反射的に男が空を見上げると、先ほどまで空に浮かんでいたはずの太陽がなくなっていた。
「ほうら、弾けただろう」
 暗い空の下、爺さんの笑い声が響いた。
SF
公開:24/08/31 17:53

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