ビールの泡はビールなのか？

「ビールの泡はビールなのか」
　僕の言葉にあいつは笑った。
「泡のないビール飲みたいか」
「いや。しかし泡で嵩増しされても嫌だろう」
「泡とビールの比率はどれくらいがいい？」
　僕はちょっと考えた。
「七対三くらいかな。君は？」
「八対二がいいね」
「やっぱり泡は少ない方がいいんじゃないか」
「いや、この二割がいいんだ」
　僕はスマホを取り出してスイスイと調べた。どうもかつて「ビールの泡はビールなのか？」という裁判があったようだ。そのことを手短に話すとあいつは笑った。
「判決は？」
「ビールの泡もビールらしい。何なら泡の方がアルコール度数が高いそうだ」
「となると下の液体は何だ？」
「麦の汁だろうな。発酵はしてるだろうが」
「ホップは何だ」
「香りつけじゃないか？　お冷のレモンみたいなもんだろう」
　こうして酔いが回ってくると、僕たちは。
　泡のように浮かぶ話を、ぷつぷつと、するのである。