泡沫の再会

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夏の夜、祭りの帰り道、僕は河原に座っていた。遠くで花火が打ち上がり、夜空を彩る。その隣に、彼女が静かに現れた。昔、僕が好きだった、けれど今はもう会えない彼女が。

「久しぶり」と僕が声をかけると、彼女は微笑んで、小さなシャボン玉セットを取り出した。泡が空に舞い上がり、花火の光を浴びて虹色に輝く。「どっちが好き?」と彼女が聞く。「花火と泡、どっちも消えちゃうけど、その一瞬がすごく綺麗だから」と彼女は続け、消えゆく泡を見つめる。

そのとき、僕は気づいた。彼女の姿が薄れていく。風に乗って、彼女の声が囁いた。「ずっと一緒にいたかったけど、もう行かないと」

僕の心に深い痛みが走る。彼女はもうこの世にはいないのだと改めて実感する。最後の花火が夜空に咲き、消えると同時に、彼女の姿も消えた。僕はただ、夜空を見上げながら、彼女が残した泡の儚さを胸に刻んだ。
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公開:24/08/31 13:00
更新:24/08/31 13:01
クラフトビールコンテスト② 花火

つじなか( 関東 )

都内在住 / 会社員 /男性
ミニシアター、小説、エッセイ、カレー、コーヒー、音楽、居酒屋、日本酒、クラフトビールが好きです。

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