バブルリングプロポーズ

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「わぁ、綺麗。ずっと見ていたい」
水族館で、シロイルカの「バブルリング」と呼ばれる輪っか状の泡を見て彼女が言った。
その言葉がきっかけで婚約指輪を作り始めて半年。ついにそれは完成した。
3cmほどの大きさの透明なガラス玉が付いた指輪。ガラス玉の中では、小さなシロイルカが泳いでいる。
翌日、僕は彼女と例の水族館に行った。
シロイルカの水槽の前で僕は跪き、指輪のケースを開ける。
「僕と結婚してください」
「ごめんなさい」
「えっ?」
「あなた、最近ずっと部屋に引きこもってコソコソしてたでしょ。なんだか冷めちゃったの」
「それはこの指輪を作ってて……」
ガラス玉の中の小さなシロイルカは無邪気に泳いでいる。
「ほら!バブルリングを吐くんだ!」
彼女はもう立ち去っていた。
小さなシロイルカは輪っかにもならない泡をプクプクっと吐き出した。
策士は策にブクブクと溺れ、今までの努力がすべて水の泡となった。
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公開:24/08/31 07:00
更新:24/08/31 10:36
バブルリング プロポーズ 指輪

雪宮冬馬( 日本 )

Yahoo!でのログインがどうもできないので新たに作りました。
20代男。趣味でショートショートを書いてます。
夢は「坊っちゃん文学賞」受賞!

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