台風が来ている時は外に出てはいけない

「台風が来ているから、今日は外に出ちゃダメだよ」

両親の言いつけを破って、僕は外に出た。
確かにさっきまでは凄い雨風だった。
でも、その雨風が急に止んで晴れて来たんだ。もう外に出ても大丈夫だろう。
空を見上げる。台風の目と目が合った。
台風が熱を持った視線で僕を見つめる。熱い吐息を吐きかける。
それがとても怖くて、僕は急いで家の中に引き返した。
ガンガンと扉が叩かれる。台風の風が鍵のかかった扉を無理矢理こじ開けようとする。
雨戸がガンガンと叩かれる。台風の風が窓から侵入しようとする。
何度も家が揺さぶられる。僕は台風が行き過ぎるのを震えながら待った。
だけど、待てど暮らせど台風はどこにも行ってくれない。
僕の家の前で停滞し、僕が出てくるのをずっと待っている。
どうやらあの台風、僕に一目惚れしたみたいだ。
恋によって勢いを取り戻した台風は１週間以上も僕が出てくるのを今か今かと待っている。