シュワワワッ!

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シュワワワッ!
泡のはじける音が聞こえると、ついあたりを見回してしまう。

あの夏、あの子と祭りに行った。
人混みの中を歩いた。手をつなぎたくて、でも触れることができなくて。
喉が渇いたと言って買ったラムネを、あの子はひとくち美味しそうに飲んだ。
そして「はいっ」と僕の目の前にラムネの瓶を差し出したのだ。
「え、いいの?」手をつなぐどころじゃない。
あの子は「全然いいよ」って、気にしてないのか、あざとかわいいのか。
ドキドキしながら間接キッスした。

新学期、あの子はいなかった。
急に転校したという。
父親の借金とか、夜逃げとか、大人たちがささやいていた。

シュワワワッ!
部活帰りのコーラ、仕事終わりのビール。楽しそうな炭酸の音が響く。
時が過ぎ、僕が飲むのはラムネよりもビールになったのに、今でも人混みの中であの子を探してしまう。
青春
公開:24/08/30 19:55
クラフトビールコンテスト②

kao

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