どこまでも深く
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海に行きたい、と彼女が言った。
よく晴れた休日だというのに、海では彼女と2人きりだった。波は高くないのに、波音だけがやたらと強い。彼女は背筋を伸ばし、波打ち際で水平線を見つめている。
波の縁が白く泡立っている。泡になって消えていくのは人魚姫だったか、と彼女の白い裸足を見るともなく見ていると、彼女がおもむろに一歩前に踏み出した。
すぐさま波が彼女の足首を舐める。波が引いても泡だけが残り、彼女の足首でぱちぱちと爆ぜた。彼女がもう一歩踏み出す。波がさっきよりも強く彼女を誘う。咄嗟に彼女の手首を掴んだ。
行くな。
「好きだ」
彼女がゆっくりと微笑む。
ひときわ大きな波音。
次の瞬間にはもう海の中にいた。
泡が全身を包んで彼女の顔も見えない。彼女の名前を呼ぼうにも、声が泡に変わる。彼女に手を引かれている、それだけが確か。
「やっと言ってくれた」
虹色に輝くうろこが、見えたような。
よく晴れた休日だというのに、海では彼女と2人きりだった。波は高くないのに、波音だけがやたらと強い。彼女は背筋を伸ばし、波打ち際で水平線を見つめている。
波の縁が白く泡立っている。泡になって消えていくのは人魚姫だったか、と彼女の白い裸足を見るともなく見ていると、彼女がおもむろに一歩前に踏み出した。
すぐさま波が彼女の足首を舐める。波が引いても泡だけが残り、彼女の足首でぱちぱちと爆ぜた。彼女がもう一歩踏み出す。波がさっきよりも強く彼女を誘う。咄嗟に彼女の手首を掴んだ。
行くな。
「好きだ」
彼女がゆっくりと微笑む。
ひときわ大きな波音。
次の瞬間にはもう海の中にいた。
泡が全身を包んで彼女の顔も見えない。彼女の名前を呼ぼうにも、声が泡に変わる。彼女に手を引かれている、それだけが確か。
「やっと言ってくれた」
虹色に輝くうろこが、見えたような。
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公開:24/09/01 13:45
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