星降る食卓

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 まず出されたのはケチャップまみれのソーセージ。そうそう、弁当のおかずで一番好きだった。続いて油揚げとわかめの味噌汁。顆粒だしを使った母の手軽な味噌汁こそ、人生最期、僕が口にしたい料理だ。「あんた最期の晩餐はもっとパーっとしたもんにせんと」母は眉間に皺を寄せたが、目は笑っている。そして「私が最期に食べたのは何やったかねぇ」首を傾げた。ポテトサラダ、胡麻和え、オムレツ。母の食卓は賑わう。
 メインは鶏のから揚げ。試合で勝った日や誕生日には僕の好物をせっせと揚げてくれた。「衣に卵を入れるのが母ちゃん流や」節だった太い指でボールの中の肉をぐるぐるかき混ぜながら言っていたっけ。
 蜜柑が入った牛乳寒天のあと、エプロンを外し、母は泡立つ麦酒のグラスをふたつ置いた。「お酒飲める年になったんやろ?ほれ、乾杯」グラスを高く上げ、母はきれいに飲み干す。そして金色の泡となり、きらめき、星はまた昇っていった。
その他
公開:24/09/01 12:34

こずえ

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