人魚ビール

「これがデンマークの人魚ビールだよ」
写真には、ガラス製の巨大なビア樽の底に、美しい人魚が横たわっていた。
「人魚姫の話だと人魚は最後泡になって消えるけど、
そもそも人魚は水中で全身から泡を出すし、溶けたり消えたりしないんだ。
人魚ビールは、人魚の泡を使ったビールで、僕も日本で作ってみようかと」

なるほど、これが日本の人魚ビールか。
ビア樽の底で日本の人魚がぷくぷく泡を出していた。
角の生えた夜叉の顔に、巨大なでっぷりとした魚の体。
人魚というより、人面魚にしか見えないけど。
これ…人魚なの？

「人魚が美しい女性の姿をしているのは西洋だけだね。男の船乗りの空想という説もある。
日本では妖怪として描かれるから」

僕は人魚ビールを一口飲んだ。
深いコクと穀物の香り。
細やかなビールの泡からは、大海原を華麗に泳ぐ、人魚の群れのイメージが…

やっぱり、人魚ビールはデンマーク産が良さそうだ。