大泡の神

0
5

時は戦国時代。
水吉軍千人は敵軍十万に囲まれ、山奥の神社に立て籠もった。
多勢に無勢、もはやこれまで、討ち死に覚悟で突撃を決めた。

水吉は最後に神社に祀られた、大泡の神に手を合わせた。
「敵に一泡吹かせることができますように」
すると厳かな声が辺りに響き渡った。
「そなたの願い、叶えてつかわす」

突然、敵軍十万全員の口が開いた。
次の瞬間ぽんっと音が鳴って、その口から泡が一つ吐き出された。
みんなが、驚いて空を見上げると、
十万の泡がぷかぷか浮かんで、きらめきながら空を埋め尽くした。
その美しい光景に、歓声と拍手があちこちから湧き上がる。

「皆のもの見ろ!我らには大泡の神がついているぞ!皆続け!」
水吉は一泡吹かせた敵軍の真ん中に勇猛果敢に踊り込み…

…そのまま歴史の闇の中に、泡のように消え去った。


ちなみに大泡の神は芸能の神として祀られていて、とくに水芸にご利益があるという。
公開:24/09/01 11:36
更新:24/09/01 12:04

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容