一泡の出会い
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「もう一杯!」
カウンターにドンと置かれたジョッキには、液体が去った今もグラスの縁で泡が舞う。
「そろそろおやめになったほうが」
「今日はお祝いだから」
お客様は様々なれど、このお客様ほど美味そうにビールを飲み、あっという間に酔いつぶれるお客様はいない。最後と釘を刺して出せば、また上機嫌に一息で呷る。
「ここに通って長いが、たくさんの客が来るだろう? まさに一期一会だ」
「ええ。喜ばしい限りです」
「見給え、このバーはきっとこのジョッキで、我々はこの泡のようにここでぶつかって出会った。この一つ一つが誠に尊く、三十年前にここで妻と会ったのも」
ふわふわと小さな泡が溢れて消えるその風情に、妙な不安が湧き上がる。
「……何のお祝いで?」
「孫が生まれたんだよ」
真っ青になってレジを打ってコートと帽子を手渡した。
「飲んでる暇ないでしょう? 消えてしまいますよ、その泡みたいに!」
カウンターにドンと置かれたジョッキには、液体が去った今もグラスの縁で泡が舞う。
「そろそろおやめになったほうが」
「今日はお祝いだから」
お客様は様々なれど、このお客様ほど美味そうにビールを飲み、あっという間に酔いつぶれるお客様はいない。最後と釘を刺して出せば、また上機嫌に一息で呷る。
「ここに通って長いが、たくさんの客が来るだろう? まさに一期一会だ」
「ええ。喜ばしい限りです」
「見給え、このバーはきっとこのジョッキで、我々はこの泡のようにここでぶつかって出会った。この一つ一つが誠に尊く、三十年前にここで妻と会ったのも」
ふわふわと小さな泡が溢れて消えるその風情に、妙な不安が湧き上がる。
「……何のお祝いで?」
「孫が生まれたんだよ」
真っ青になってレジを打ってコートと帽子を手渡した。
「飲んでる暇ないでしょう? 消えてしまいますよ、その泡みたいに!」
その他
公開:24/09/01 01:52
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