はなむけ 2

3
2

つづき


ある時。
あの人は眉を寄せ、落ち葉のようなそれを丁寧にパイプに詰めて煙を吸い込んでは溜息と一緒に綿毛を吐き出す。

「君は花が好きですね」

花瓶の水を取り替える私に向かって。
他の誰もやらないからだ。それだけのこと。
私は今水を取り替えた花の名すら知らないのに

あ―また思い出す。綿毛、綿毛が。

「何か悩み事があるのですか?
いつも難しい顔をしている」

悩み事がない訳ではない。
かといって大それた悩みなど思い当たらない。

隣人の生活音が耳障り
自分が行く度赤信号の交差点、だとか

恐らく長年の不眠症で出来た私の下瞼の隈を見てそう思ったのだろう。
青春
公開:24/08/28 23:59

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