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スパークリングワインの店ではございません。いえ、石鹸を販売している訳でもないんです。ええ、よく間違えられますが、泡の専門店でして。

この場で、お作りします。たてる、というほうが正しいのでしょうな。残念ながら、長持ちはしません。すぐに、消えてしまう。

そうですか、お買い上げいただける。では、泡を立ててみましょうかね。

ほら、盛り上がってまいりましたでしょう。お菓子のメレンゲをつくる工程と似ているかもしれません。ちょうどいい硬さになるまで、練り上げてまいります。

では、どうぞ。近くでご覧になって、消えていく泡を味わって下さい。

子どもの頃のしゃぼん玉。シャンプーでツノを立てた夏。初めてのシェービングクリーム。泡を敷きつめたバブルバス。そして、ビールでできた白い髭に笑いあったあの日。

泡がね、記憶を思い起こさせるんです。

消えていくものだからこそ、価値があるのではないでしょうかね。
ファンタジー
公開:24/08/28 22:36
更新:24/08/28 22:45

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