結婚埴輪

彼に結婚指輪を差し出され、プロポーズされたあの日。私は彼に結婚埴輪を差し出した。
指輪と埴輪。その交換は冗談のように聞こえるが、私は至って真面目だ。
彼は私を幸せにすると言ってくれた。私を守ると約束してくれた。
私も彼を幸せにしたい。彼を守りたい。だから魔除けとして埴輪の指輪を彼の薬指に嵌めた。
彼の身に何かあれば、その厄は埴輪が代わりに受けてくれる。
ただの気休め？そんな事はない。
先日の事である。彼とデート中、突然結婚埴輪が砕けた。
土で作られた指輪。いつか壊れるのは当然だ。
だけど何の前触れもなく砕けた指輪に彼は疑問を持ち、その場で足を止める。私も砕けた指輪を見つめる。
その直後、恐ろしいスピードで私達の前を車が通り過ぎた。
危ないところだった…彼が足を止めていなかったら、さっきの車に私達は撥ねられていただろう。
そして彼が私を抱きしめてくれなければ、私だけが犠牲になるところだった。