シ泡セ

泡が、待っている。

朝早く、起きる。スタートダッシュが、できるように。あこがれる未来は遥か彼方だから、今は目の前にある一日をしっかりと生きるしかない。

汗をかきながら、人の波を渡り歩く。時に走る。決して、人づきあいが得意な訳ではない。一生懸命さだけを頼りに、お願いをする、頭も下げる。つらい時間帯もあるし、嫌な思いもする。でも、嵐の中でも時は経つ。

残業して帰って、夢に向けた日課をこなす。そしてようやく、一日を締めくくる瞬間がくる。

今日は、頑張った。精一杯やり切った。そんな日が、毎日ではないけれど、たまにある。そんなときには、ご褒美があってもいい。自分を認める儀式が、あってもいい。

たいていのビールはワンコインで買える。でも、お金じゃない。

冷やしたグラスに、ビールを注ぐ。コツは泡を上手に立てること。目の前で、泡が、待っている。喉が鳴る。

こういうのを、シ泡セ、と呼びます。