ヒュルルドン

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「ヒュルルドン落ちて来ないね」痩せこけ薄汚れた頬に涙の跡を残しながらニコリと笑い少女は私の手を握る。「これは花火。落ちるんじゃなくてあがるの。綺麗でしょ?」「でも音はヒュルルドンだからちょっと怖い」そういいながら痩せた体を寄せてくる。抱き寄せ華奢な骨を感じながら背中をトントンすると落ち着いた。それなに?と聞くので「ビール、大人の飲み物だよ」と答えると「お月様にいるお母さんも飲んでいるかしら」と言われ、ぐっとくる。それを隠すように慌ててかき氷を少女に渡す。こんなにたくさんの氷は初めてとはしゃぎながら食べる姿を見て、世界中の子どもが順調に大人となりビールを楽しめる平和な夜が来ることを願う。一気に押し上げる苦みをビールの泡で塞ごうとグッと煽り少女の方を見ると体が透けていた。「帰るの?」「うん、ありがとう」80年前には楽しめなかった祭での経験を少女は月の中で母親に報告しているだろうか。
ファンタジー
公開:24/08/28 13:19

はそやm( note )

頭の中にあるくだらない話を投稿することでクスリと笑っていただけることを目指しているライターです。

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