淡い恋

亜矢子は、頭上に浮かんでいる泡の色で恋人を決める。
今度の彼氏の泡は、ひときわ美しい。太陽光を浴びると七色に輝き、室内の蛍光灯だと落ち着いた白色になる。ホテルの間接照明だと幻想的になり、まるで影絵のように、様々な場面が泡の表面に映し出される。
亜矢子は彼氏に夢中になり、それは彼氏も同じようだ。
もちろん亜矢子の頭上にも泡がある。二人の距離が近づくとともに二人の泡も接近し、ついにはひとつになった。
この瞬間が、二人の幸せの絶頂だった。
だが、泡ははかないものだ。二人の間に投げかけられた小石ほどの障害が、二人の泡を突き抜け、あっさりと泡を割ってしまう。
二人の気持ちが急速に冷えていく。こうして、二人の恋は終わりを告げた。
心の傷が癒えたころ、亜矢子の頭上に泡が生まれ始める。
今日も、亜矢子は泡い恋を探している。