ビール工場の七瀬さん

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俺の趣味は、ビール工場の見学だ。
近くの温泉に入ってから、ビールを飲むのが楽しみである。

いつも水曜日の14時に予約を入れている。
七瀬さんがガイドを担当するからだ。
二回目の見学の時、俺のことを覚えててくれたのだ。

「お兄さん、いつもありがとうございます~」
おれの気持ちは、炭酸のように弾ける。
  
七瀬さんの解説は、ほんわかしている。
まるで発酵前の麦芽ジュースのように。
 
「あっ、みなさーん、ナンパはだめですからね~」
いつものテンプレだが、俺の心はほろ苦くなる。
 
みんな楽しみな試飲の時間。
注ぎたてのビールを飲めるのだが、缶ビールのおいしい飲み方を実演してくれる。
 
二度注ぎ、三度注ぎ。
注ぎたてよりも、七瀬さんが注ぐビールが俺は好きなのだ。
七瀬さんへの思いは、より一層注がれていく。
 
東京湾を見ながら思う。 
今日も泡沫のごとく、儚い恋の時間は去り行くのだ。
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公開:24/08/30 12:41

天ヶ埼紫翠( 東京都 )

趣味で小説書いてます。
よろしくお願いします。

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