泡てんぼう

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SNSがあるし大丈夫だと思っていた。例え数ヶ月逢わなくても。今日は話があると言われて突然店に呼び出されたがきっと別れ話だ……。
『生一つ』
間も無く運ばれてきたビールには泡が全くなかった。
『ちょっとこれ、入れ直してもらえますか?』
店員はちら、とこちらを一瞥するとメニューをよく見てくださいと言った。
急いで確認すると
【当店では本音ビールのみお出ししています】と書かれていた。
『本音?』
「お客様から聞こえてきたのはあわなくても……。そう仰ってましたので泡は省かせていただきました」
『違う、それは彼に少しくらい逢わなくてもって意味で……』

「そうでしたか。彼氏さんならあちらに既にいらっしゃってますよ。あまりにも慌ててお越しになったので、より一層泡立ててお出ししました」

正装をしてネクタイまで締めている彼の口元には一足早く飲んだのだろう、立派な白いビール髭が蓄えられていた。
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公開:24/08/29 22:02
更新:24/08/29 22:11

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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