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グラスに缶ビールを注ぐ。琥珀色に泡が入道雲のように膨らんだ。
妻はまだ仕事で、娘・千夏(ちなつ)の夕食と風呂を済ませた僕は晩酌だ。「泡のとこ、クジラさんいる?」と千夏が尋ねた。
「ん? いないよ。飲んで減らしてみようか」
泡が気になるわけだからと、泡だけ飲んでみる。
「クジラさん出てきた!」
僕は驚いて口を離した。まだ一センチほど残った泡の中に、たしかに小さな小さなクジラの頭が見えたのだ。だが下からグラスを覗き込んでも泡しか見えない。
「パパ、全部飲んで」
しかし泡の形状はもう流氷だ。突如ピューッと、グラスから水が噴き出した。
「うわっ」
そして僕たちが叫んでいる間に、クジラの頭は姿を消した。千夏は残念がり、噴き出した水はビールだった。
クジラは流氷の浮かぶ場所には棲息しないんだっけ。僕はぼんやり考えた。
妻が帰ってきたら、一本飲んでもらいつつ一緒に観察してみよう。お疲れ様の言葉を添えて。
妻はまだ仕事で、娘・千夏(ちなつ)の夕食と風呂を済ませた僕は晩酌だ。「泡のとこ、クジラさんいる?」と千夏が尋ねた。
「ん? いないよ。飲んで減らしてみようか」
泡が気になるわけだからと、泡だけ飲んでみる。
「クジラさん出てきた!」
僕は驚いて口を離した。まだ一センチほど残った泡の中に、たしかに小さな小さなクジラの頭が見えたのだ。だが下からグラスを覗き込んでも泡しか見えない。
「パパ、全部飲んで」
しかし泡の形状はもう流氷だ。突如ピューッと、グラスから水が噴き出した。
「うわっ」
そして僕たちが叫んでいる間に、クジラの頭は姿を消した。千夏は残念がり、噴き出した水はビールだった。
クジラは流氷の浮かぶ場所には棲息しないんだっけ。僕はぼんやり考えた。
妻が帰ってきたら、一本飲んでもらいつつ一緒に観察してみよう。お疲れ様の言葉を添えて。
ファンタジー
公開:24/08/25 23:35
更新:24/08/26 18:38
更新:24/08/26 18:38
クラフトビールコンテスト②
泡
ものすごく遅筆。ジャンル迷走中。とりあえずコンテスト参加を目指しています。
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