泡玉雲

その天使は、下界の様子を見に来ていました。舞い降りた村には、泡玉があちらこちらに転がっていました。泡玉は、神様が人間の心に希望が宿るよう、与えられたものです。天使は、人間に捨てられたものだと思いました。泡玉は今にも弾けて消えそうです。それでも村の人々は、悲しみや傷を背負って生きていました。天使は空に小さな雲を作って浮かべました。泡玉は、その雲に向かって舞い上がりました。雲はやがて大きな泡玉雲になっていきました。俯いて歩いていた人たちは、空を見上げました。その泡玉雲には、自分たちが捨てた泡玉があるのを見つけました。その一つひとつが宝石のように輝いています。やがて雲は、雨の如く泡玉を降らせました。人々は掌に受け止めます。その手には『希望』が握られていました。
村の人々は麦酒を作りました。麦酒をグラスに注ぐと泡が現れます。泡には、人々が美しい希望を捨てないようにと、願いが込められているのです。