本の世界
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奇妙なことが起きるようになった。店で買った、図書館で借りた本が、飛んで行ってしまうのだ。レジを済ませた直後に、燕の如くサッと飛んで行くのでバッグにしまう暇もない。というか書架からどんどん飛んでいく。蔵書を失いたくない者たちは本に犬に着けるようなリードを取り付けた。すると本の本権(人間でいう人権)が侵害されていると唱える有識者が現れ始める。回収されずに飛び回る本たちは、秋になると番って子を産み海を超える本まで出てくる。読み終えられなかった本と偶然出会い矢も盾もたまらず結婚してしまったなんて強者まで現れる。本に振り回される世界は平和で良いという人もいる。読書好きには読了できないストレスを感じる者が多い。同じ作者の音読して野良の本をおびき寄せ捕まえる商売が盛況だ。ベテラン作家の本はこの方法で持ち主の元に戻るが。新人なものは野良化しやすい。飛ぶのも下手で通行人の頭によくぶつかり社会問題化している。
その他
公開:24/08/26 22:19
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