シエスタ

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初めての街を歩いていると海風が快い。日が高い。瀟洒な小ぶりのレストランに入った。
他に客はいない。漆喰の壁に絵皿が掛かっている。案内されたテーブルにウエイトレスがやってくる。「何にします?」「店のお勧めは?」「シエスタ」「シエスタって昼休憩の。面白いメニュー」ウエイトレスは笑って厨房に戻りしばらくして大きな皿をひとつテーブルに置いた。スープ皿だが中身は冷たそうな、水よりもっと透明な液体に泡がぷつぷつと。どうぞ、とウエイトレスは行った。スープ皿の透明な泡を見ているとすうっと吸い込まれて、水のなかで泳いでいた。大きなプール。スペイン風の中庭。一人で泳いで、デッキチェアに横になる。陽が少し傾いた。眠ってしまったか。ウエイトレスがまたスープ皿を持ってきた。スプーンで冷たい泡を啜るととても美味く平らげてしまった。ウエイトレスが消えた。見回しても出口がない。まだ午睡の途中なのか。シエスタって長いんだ。
その他
公開:24/08/26 15:15

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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