父の小町

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父からは小町という名前を与えられ、蝶よ花よと育てられた。悩む思春期にも小町は気丈に生きたが、それは美貌故でなく満足からだった。他人と比較してどう、ではなく、自分をどうしても許容してくれる人がいれば人間そんなものだ。
やがて高校生活も佳境に差し掛かり、旧態依然とした容姿コンテストのビラが父に届くと、あれよあれよという間に小町は舞台に立っていた。可憐なアイドルが言う、「両親に勝手に応募されて……」も、小町の場合は結果あいまって悲惨に見えた。
物心というものは、付くのは早くても気付くのは遅い。後者の時期に、父が本気で信じていることに気付き、小町は失笑した。確かに整った容姿は欲しいが、それは月が欲しいのと同じである。
そこに一枚チラシが届く。美容整形の広告だった。父はそれを拾い上げると、今度は小町を拾い上げ、雑居ビルに入る。巨額の金が財布から逃げ、小町はスポットライトを浴びたが、すぐに父は死んだ。
青春
公開:24/08/21 22:38
真実の悪

真槻梓

自分の生活を管理してくれる人が欲しい

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