殺し屋

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楽しみにしていた小説を購入。早速、カフェでテイクアウトしたコーヒーを手に、涼し気な木陰のベンチに腰を下ろした。

紙包みを開け、まずは装丁を楽しむ。表紙の手触り、イラスト、タイトルの文字のデザイン。
それを十分味わって、コーヒーを一口飲んだ。鼻に抜ける深いコクと味わい。

香りによって思考を一旦リセットし、いよいよメインデッシュへと向かう。私は高鳴る想いを押さえながらページを捲った。真新しい紙とインクの匂いが微かに漂う。

そこに流れる大河。
それでもどんな大河も一滴の水から始まる。

私はその一滴である、最初の文字に目を落とした。そしてその一文を乾き切った大地のように吸収していく。

「それ、面白いですよね?犯人は常代さんですよ。」

ふいにかけられた言葉。
物語にのめり込み始めた私はハッとした。

油断した……。

私は楽しみにしていた本を虚しく閉じた。本と私の胸には風穴が空いていた。
公開:24/08/24 11:58
更新:24/08/24 12:25
殺られるなら 某エアピストル選手に 撃ち抜かれたい… (ある意味既に撃ち抜かれてる)

ぽんず

ぽんずとかねぎとか薬味と調味料。
(たまに作品整理をします。整理したSSはNovelDays等にあります)
http://lit.link/misonegi

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