泡沫造

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寝殿造、書院造、数寄屋造ーーどれも日本の伝統的な建築様式で有名だが、誰も見たことがない幻の建築様式がある。それが「泡沫造」で、これを再現することが俺の夢だ。
儚く消えていく泡沫造の建築物は、だからこそ美しく風流で雅な佇まいをしていて、建築技術の粋を結集できた者だけが再現を試みることが許される。
古文書にも殆ど説明はされていないが、当時の権力者が名だたる職人に依頼したものの完成には至らなかったと記されている。
世界では、ビザンツ、ロマネスク、ゴシックが三大建築様式で知られているが、「バブル様式」と呼ばれるものが泡沫造と酷似しているという。古代文明では、夏場にバブル様式のビアホールが使われていたらしい。その一瞬に神々しいまでの風格を持ったビアホールは、現状維持が難しく、短期間だけ存在が可能だったといわれている。灼熱の太陽の下、蜃気楼のようなビアホール。まるで現れては消えるビールの泡沫かの如く。
その他
公開:24/08/24 06:00
寝殿造 書院造 数寄屋造 建築様式 泡沫 ビザンツ様式 ロマネスク様式 ゴシック様式 バブル ビアホール

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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