「大地」「風」「火」
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長い一本道を男が歩いていた。夏真っ盛りだというのに男はマントを着ていた。顔中汗まみれで息も絶え絶えだ。それなのに男はマントを脱ごうとしない。虚ろな顔で歩みをやめなかった。それを見ていた大地と風と火は不思議に思った。いったいなぜあの男はマントを脱がないのか。そこで風はひと吹きして大風を送ると、男はますますマントに強くしがみついた。次に火が道を燃やすと、耐火材で作られたマントにすがった。最後に大地が身を震わすと道端の地蔵の前掛けがとれ、男はマントを脱いで地蔵にかけた。マントの下は裸だった。その体には北風と太陽の秘密が書かれていた。男は叫んだ「北風に太陽よ、よくもおれを辱めたな」それを見て恥じ入った北風は北国に逃げ帰り、太陽はまだ午前中だというのに早々に沈んでしまった。
その他
公開:24/08/18 02:59
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