ａ-Ｂｏｏｋ

読書感想文の本を借りに漂流図書館へ来た。
世界中の水を渡り歩く図書館で、今週はうちの学校のプールに浮かんでいる。大きなビート板や浮き輪に乗った本棚が、くっついたり離れたりしながら泳いでいくのを、僕も海パンにバタ足で追っ掛ける。読書に来たんだか、水泳に来たんだかちょっと微妙だ。

漂流図書館で借りられるのは、アブックという泡本だ。丸い泡の形をしていて、水面に浮かべると膜に文字が出て読める仕掛けだ。
普通の泡より丈夫だけど、乱暴すると割れてしまうから扱いは丁寧に。読みながら水遊びしたり、プールサイドで休んだり、原稿用紙を広げたり。午後いっぱいかけてのんびり感想文を書いた。

夕方、真っ黒に日焼けして家に帰ると、母さんが僕を見てニコニコした。
「あら懐かしい。私もその本読んだわよ」
言ってないのに、なんで母さんは僕が読んだ本を知ってるんだ？
シャワーを浴びようと風呂場に行き、鏡を見て謎が解けた。