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送り火の帰り道、集会所に大勢の人々が集まっていたので声をかけた。
「なにかあったんですか?」
「泥棒だよ。それで犯人を見つけようと、みんなをここに集めたのさ」
普段は静かな田舎の住宅地だ。盆期間ということもあり、訪ねてきた親戚連中が疑われたのかもしれない。しかしなかには幼い子供もいる。私は勇気を振り絞って訊ねた。
「どこのお家に泥棒が入ったんですか?」
ご老体は、なぜそんなこともわからないのかと不思議そうに首をかしげている。
「ここにいる全員の家だよ。迎えがないから心配で来てみたら、昔とは様子が違うし、帰るにも道がわからなくてな。だからきっと、泥棒のせいだということになったんだ」
黄昏れ時に揺れる、影のない人々。消した提灯の火をふたたび灯して、私は言った。
「そういうことなら、私がお墓までご案内いたしますよ」
口々にお礼を告げる一行を引き連れながら、私が此岸に留まる意味を考えた。
ファンタジー
公開:24/08/17 14:02

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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