泡の季節
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私の故郷であるこの町には、泡の季節がある。
海が流氷に覆われる少し前に、海岸線が白い泡に包まれる。
この周辺には化学工場も、排水を垂れ流すような住宅地もない。茫洋と広がる海と大地と、突き抜けるような青い空があるだけ。
だから、この泡は自然の産物であることは間違いない。だが、だれも泡が発生する原因も理由も知らない。調べようともしない。
ただ、泡は静かに海岸線に押し寄せて、砂浜を洗い流し、大海原へ帰っていく。
しばらくすると、海岸は流氷に覆いつくされる。
たどりついた流氷の上で、シロクマがあくびをした。シロクマは家族とともに、氷に閉ざされた寂しい町を見下ろす。
私はふと思う。
この泡は、この町にも染みついた人間界の匂いを消し去るためではないのか。泡が全てを包み込み、分解し、海の底へと沈めていく。
純白のシロクマが、私の目には、とてもまぶしく思えた。
海が流氷に覆われる少し前に、海岸線が白い泡に包まれる。
この周辺には化学工場も、排水を垂れ流すような住宅地もない。茫洋と広がる海と大地と、突き抜けるような青い空があるだけ。
だから、この泡は自然の産物であることは間違いない。だが、だれも泡が発生する原因も理由も知らない。調べようともしない。
ただ、泡は静かに海岸線に押し寄せて、砂浜を洗い流し、大海原へ帰っていく。
しばらくすると、海岸は流氷に覆いつくされる。
たどりついた流氷の上で、シロクマがあくびをした。シロクマは家族とともに、氷に閉ざされた寂しい町を見下ろす。
私はふと思う。
この泡は、この町にも染みついた人間界の匂いを消し去るためではないのか。泡が全てを包み込み、分解し、海の底へと沈めていく。
純白のシロクマが、私の目には、とてもまぶしく思えた。
その他
公開:24/08/16 21:48
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