晴れ、ときどき泡

0
3

「カズキって、友達とわたし、どっちが大事なの?」


朝からそんなこと聞くなって。


「マユミはどっちだよ」

「うーん、どっちも大事」

「ずる」


都内1Kのアパート。先週から居候するマユミは、今日も駄々をこねている。きっと猫になりたいのだ。


「ならマユミも友達の待ち合わせは大事だろ?じゃあ行くぞ」

「えーでもさみしい」

「もう遅れちゃうよ」


ドアを開くと、外は秋だった。上空の巻層雲が、まるで今までの暑さなんて存在していなかったかのように、堂々と空を支配していた。地上の子ども達は、シャボン玉を吹きながら気ままに通りを練り歩いている。目の前を通り過ぎる泡には、マユミの姿が映っていた。


「なぁ外涼しいからエアコン切っとけよ」


マユミはもういなかった。

外は雨だった。黒々とした積乱雲に、蒸し暑い夏の記憶を甦らせる。


「今までありがとう。カズキのこと好きだったよ」
恋愛
公開:24/08/20 17:23
更新:24/08/20 19:35

かずま( 関東地域 )

2023/10/19に参戦した新参者です。忌憚のないコメントお待ちしております。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容