会社の刀鍛冶

私の勤める会社には元刀鍛冶という異色の経歴を持つ上司がいます。
上司の主な仕事は若手の教育。入社当時、私もお世話になりました。
職人気質な上司の指導はとても厳しく、心折られる人も多いです。
「この仕事を続けるのなら熱意が何よりも大切だ。冷めてしまえば生半可な鉄はすぐに折れてしまう」
そう話す上司は誰よりもこの仕事に熱意を持っています。
キレのある言葉は日本刀の波紋の様に美しく、迂闊に触れると怪我をする危うさがありました。
私は上司に叩かれるというより、叩きのめされました。
それでも折れませんでした。折れるわけがないです。
私が取引先で大きな失敗をした時、上司は押っ取り刀で駆けつけてくれたんです。
上司のおかげで何とかなったものの私はこの時、切り捨てられるのを覚悟していました。
「経験に磨きがかかったな」
その一言で失敗が糧になりました。
指導と経験で磨き上げられた私。今では上司の懐刀です。