お前、だっぴしてないの？

ゲリラ豪雨の後の快晴。貼り付くような湿気と日光に嫌気がさす。

「あっつー」

手の平を団扇にして生温い風を送りながら通学路を歩いていると、同じクラスの斎藤に出くわした。

「お前…そんなにベタベタ貼りついたままで暑くないの？」

呆れ顔の斎藤はそう言うと俺の右腕を軽く爪でカリカリとしてから透明な何かを少し摘み、ペリペリ剥がし始めた。

「な…なんだ！？これ！」

「何って陽皮脂だろ。今年は太陽燦々なんだから、こまめに脱陽(だっぴ)しないと陽皮脂が肌に蓄積されて暑いに決まってんじゃん」

美容・健康の話題に疎い俺は知らなかったが、斎藤によると夏の太陽光は薄い膜…陽皮脂となって知らぬ間に体へ貼り付いていき、そのままにしていると熱がこもってしまうらしい。
斎藤オススメのクリームを塗り、固まっていた陽皮脂を柔らかくしてから脱陽する。涼風に肌が息を吹き返す横で、ぐったりと俺の抜け殻が転がっていた。