8月17日の朝

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8月17日の朝。
「あれ、ばあちゃん、どうしてまだいるの?」
昨日の夕方、送り火を焚いてご先祖さまを見送ったはずなのに。
「何言ってんだい、今日はまだ15日だろ」
僕は日めくりカレンダーを見る。15日だ。
「やばい、めくるの忘れてた!」
日めくりを2枚めくる。
「ばあちゃん、今日は17日だよ、昨日夕方姿が見えなかったから、てっきり帰ったかと」
「昨日は、初恋の先輩の姿を見に行って、そのあと思い出の場所をまわってたんだよ」

というわけで、あの世に帰りそびれてしまったばあちゃん。
はじめのうち、ばあちゃんは落ち込んでいた。
そのうち、家にはほとんど帰ってこなくなった。
家族以外の人間には姿を見られることがない。映画館、お芝居、コンサート、なんでもフリーパス状態。幽霊は寝なくても平気だから連日オールナイトも大丈夫。

ばあちゃん、毎日とっても楽しそう。
生きていたころよりも、生き生きしている。
ファンタジー
公開:24/08/16 19:00
更新:24/08/16 18:52

かのこ

最後まで読んでくださった方、感謝!

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