戦犯

幼い頃から絵を描くのが好きだった私には人に言えない特技があります。
それは瞼の裏に絵を描く技術です。
私の若い頃は戦時中で、絵と言えば家族の写真くらいでした。
故に仲間からは重宝されました。どんな絵を描いて欲しいか、下書きしたものを見せては要望に沿えるよう、何度も描き直しました。春画を描いてくれと言われる事も少なくはなかったですよ。
瞼を閉じれば見られる絵に皆喜んでくれました。この絵があれば、死ぬのも怖くないと言いました。
私は愚か者です。皆を死地に送り込む絵を喜んで描いていたのですから。
上官も戦意が高揚する事を認め、私を軍絵師として働かせ、戦場に送り込む事はなかったです。
私は、仲間を見殺しにしてしまったのです。
それに気付いてからはもう絵を描かなくなりました。
戦争が終わり、私の絵の技術を知る者もいなくなりました。これは誰にも話せません。
私が責任をもって地獄へと持って行く技術です。