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透明な蛍を見た。
夕涼みに出た宵の口、川岸の水草の間から、青白い光がふわりふわりと瞬きながら上ってくるのが目に留まった。
こんな街中に蛍の棲む川があったのか。嬉しくなってしばらく追っていたが、どうやらそれは蛍ではなく、川面に浮かんだ泡玉が風に舞っているのだった。
そういえば、近くに小規模の水力発電所があったな。ふと思ったのは、舞い飛ぶ泡が豆電球のイルミネーションにも似ていたからだ。
全部集めたら何キロワットだろう。何の気なしに手を伸ばし、乱舞する泡の一つに触れた。
パチッ。弾けた泡からフィラメントが露出し、空中に火花が散った。
パチッ。パチッ。パチッ。連鎖して弾ける泡音が、はぜる劫火や銃声や逃げ惑う悲鳴に聞こえ、思わず目と耳を覆った。
79年前の夏、世界は地獄だったのだ。
否、今も。
意を決して目を開く。川岸は夕闇の静けさを取り戻し、せせらぎを渡る風が、花火の煙と残り香を運んできた。
夕涼みに出た宵の口、川岸の水草の間から、青白い光がふわりふわりと瞬きながら上ってくるのが目に留まった。
こんな街中に蛍の棲む川があったのか。嬉しくなってしばらく追っていたが、どうやらそれは蛍ではなく、川面に浮かんだ泡玉が風に舞っているのだった。
そういえば、近くに小規模の水力発電所があったな。ふと思ったのは、舞い飛ぶ泡が豆電球のイルミネーションにも似ていたからだ。
全部集めたら何キロワットだろう。何の気なしに手を伸ばし、乱舞する泡の一つに触れた。
パチッ。弾けた泡からフィラメントが露出し、空中に火花が散った。
パチッ。パチッ。パチッ。連鎖して弾ける泡音が、はぜる劫火や銃声や逃げ惑う悲鳴に聞こえ、思わず目と耳を覆った。
79年前の夏、世界は地獄だったのだ。
否、今も。
意を決して目を開く。川岸は夕闇の静けさを取り戻し、せせらぎを渡る風が、花火の煙と残り香を運んできた。
その他
公開:24/08/15 20:51
クラフトビールコンテスト②
テーマ:泡
1945.08.15
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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