泡吹雪

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地元のビール会社に就職。
そこの『泡雪ビール』が好きだった。
雪のように真っ白で滑らかな泡は、うっすらと塩気を感じる。

「ウェットスーツ持っているか?」
勤務初日、先輩が聞く。
「持っています、サーフィンが趣味なので」
「金曜日、海に行くぞ」
「仕事、休みですか?」
「何言ってる、仕事だよ」

金曜日、先輩と海へ。
ウェットスーツ姿の先輩が大きな桶を抱え海へ入った。
金魚すくい網のような道具で、海に浮かぶ白波をすくい桶に入れる。
「この白波、泡吹雪っていうんだ。泡が飛び散る様子を雪に例えた言葉さ。『泡雪』の原料だよ」
僕も、海へ入って白波をすくう。

数日後、先輩に注意された。
「お前のすくった泡に不純物が混じっていたぞ。全部廃棄になるかもな」
僕の泡に、クラゲが混ざっていたらしい。

ところが、クラゲには発光物質が含まれていた。
暗い部屋で飲む『海月ビール』、大人気商品となる。
その他
公開:24/08/13 07:26
更新:24/08/13 09:07

かのこ

最後まで読んでくださった方、感謝!

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