努力の味

旧友と一緒に呑みに行くことになった。
彼は起業して大成功を収め、今やかなりの資産家だ。高校の時には彼とよく一緒に勉強やバイトを頑張ったものだ。
今いるのは彼のイチオシの店。
早速ビールを注文しようとした時
「努力ビールって知ってるか？」
突然尋ねられた。
「なんだい、それは？」
「知らないだろう？」
彼はニヤリと笑いながら続けた。
「この店には今まで努力をしてきたものだけが美味しく呑めるビールがあってな、『努力が水の泡になる』って言うだろ？水の泡になった自分の努力を味わえるんだ。」
そう言われて俄然興味が湧き、注文した。
口に入れる度に今までの大変だった思い出や苦い経験などが次々と頭の中に浮かんでくる。
「うまいだろう？努力を重ねてきたものだけが味わえる格別の味だ。」
程よい苦味に絶妙に甘みが絡まり、深みのある味わいになっている。

明日からも一日一日を精一杯努力して生きようと心に誓った。