お気に入りの家電について

『マスター。お話があります』
仕事から帰ってくると冷蔵庫のAIが真面目なトーンで話しかけてきた。
もしや、最近ビールを飲む量が増えた事を咎められるんじゃ…
仕方ないじゃん！今、仕事大変なんだよ！飲まなきゃやってられないって！
『実はこの度、かねてよりお付き合いしていた給湯器さんとの結婚が決まりましたので、ご報告させて頂きます』
冷蔵庫の報告にぽかんとする私。
「えっ？冷蔵庫、給湯器と付き合っていたの？」
『はい。この場所柄、話す機会も多くて、気が付けば彼女の声に私の身も心も温められていたんです。私、彼女にお熱です』
いやいや、冷蔵庫。キミも女子じゃないか！…なんてツッコミは入れない。
もうジェンダーレスなんて当たり前だし、私の同僚だってこの前、炊飯器と結婚した。今のご時世、珍しくない話である。
私もそろそろ引っ越しを…と考えていたんだけど、二人の幸せの為にこれからもこの部屋に住み続けるか。