息吹

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仕事を肩代わりさせるためだけに、適当な材料でこしらえた木偶人形。

そんなもののために、私はどうしてこんなに涙を流しているのだろう。

風の女神の祠では、人が組み立てた無機物の寄せ集めにたった一度だけ命を吹き込んでくれる。

そのようにして生まれたのがこの不恰好な人形だ。

技術をこらし、見た目も整ったしっかりとした人形を作る者も多いが、私は野良仕事を手伝うという用途にさえ足りれば充分とばかりにあり合わせの材料しか使わなかった。

ブリキの頭部に、布の袋に綿を詰めて作ったぬいぐるみのような胴と手足。

畑で採れた野菜を洗うくらいの仕事しかこなせなかったがよく働いてくれた。

短い手足で懸命に用事をこなす人形を見て、もっとしっかり作ってやれば良かったと後悔したが、その姿も愛おしかった。

寿命の尽きた木偶人形を抱きしめて、女神の祠の前に座り込んだまま動けない私の頬を、風が優しく撫でていく。
ファンタジー
公開:24/08/12 19:06

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