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泡レストランの扉を叩いたのは親方の店を飛び出したすぐ後だ。寝ても覚めても卵白の泡立て。私は菓子職人の修行がすっかり嫌になっていた。『泡立て職人求む!』扉の張り紙が揺れた。
「これが当店の一番人気」
オーナーが皿に山盛りの泡をさし出した。ひとくち舐めると痺れるような甘さが脳を満たし、次に強烈な苦味が襲った。
「なんですか、これ?」
「『浮気現場に妻』」
オーナーがにこりとする。メニューを見た。『試験に1時間遅刻』『借りた本にインクをこぼす』『新幹線を乗り過ごす』。妙な献立だ。
「逼迫したり苦難にあったりしたとき『泡をくう』というでしょう? 当店はその泡のレストランです」
私は様々な泡を立て、お客たちにくわせた。程なく店をやめた。給料はよかったが物足りない。食べる人の笑顔が見たかった。
「また修行投げ出さねえか?」
菓子職人の親方が毒付く。今度は平気だ。少しばかり苦労を味わったから。
「これが当店の一番人気」
オーナーが皿に山盛りの泡をさし出した。ひとくち舐めると痺れるような甘さが脳を満たし、次に強烈な苦味が襲った。
「なんですか、これ?」
「『浮気現場に妻』」
オーナーがにこりとする。メニューを見た。『試験に1時間遅刻』『借りた本にインクをこぼす』『新幹線を乗り過ごす』。妙な献立だ。
「逼迫したり苦難にあったりしたとき『泡をくう』というでしょう? 当店はその泡のレストランです」
私は様々な泡を立て、お客たちにくわせた。程なく店をやめた。給料はよかったが物足りない。食べる人の笑顔が見たかった。
「また修行投げ出さねえか?」
菓子職人の親方が毒付く。今度は平気だ。少しばかり苦労を味わったから。
ファンタジー
公開:24/08/14 19:12
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