豊穣の女神(後)
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進むしかあるまい。命が尽きてこの足が自ずと止まるまで。
肚を決め、前に向き直った瞬間、私は目を疑った。
目の前に女が佇んでいる。
褐色の肌に、湖のような深い藍色の瞳。
女は私を見て微笑むと、薔薇のつぼみを思わせる唇をゆっくりと開いた。
「ようやく春が来ましたよ」
足元まで届くほど豊かな髪がふわりと波打ち、その内側から薔薇や桜、すみれの花びらが溢れてこぼれ落ちた。
女の足元、ひび割れた褐色の地面から澄んだ水が湧き上がり、見る間に大地を満たしていく。
水で満たされた大地からは早回しのように次々と草花が芽吹き、春の花と新緑のみずみずしく濃厚な匂いが押し寄せてくる。
私は信じられない光景に圧倒されながら、やっとの思いで口を開いた。
「ここが、豊穣の地なのですね」
豊穣の女神は微笑みながらゆっくりとかぶりを振る。
「いいえ、ただ春が来ただけ。あなたはよく待ちました」
肚を決め、前に向き直った瞬間、私は目を疑った。
目の前に女が佇んでいる。
褐色の肌に、湖のような深い藍色の瞳。
女は私を見て微笑むと、薔薇のつぼみを思わせる唇をゆっくりと開いた。
「ようやく春が来ましたよ」
足元まで届くほど豊かな髪がふわりと波打ち、その内側から薔薇や桜、すみれの花びらが溢れてこぼれ落ちた。
女の足元、ひび割れた褐色の地面から澄んだ水が湧き上がり、見る間に大地を満たしていく。
水で満たされた大地からは早回しのように次々と草花が芽吹き、春の花と新緑のみずみずしく濃厚な匂いが押し寄せてくる。
私は信じられない光景に圧倒されながら、やっとの思いで口を開いた。
「ここが、豊穣の地なのですね」
豊穣の女神は微笑みながらゆっくりとかぶりを振る。
「いいえ、ただ春が来ただけ。あなたはよく待ちました」
ファンタジー
公開:24/08/10 19:46
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