泡袋

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百貨店などに福袋と共に置かれている「泡袋」が大人気だ。
泡袋はプチプチに巻かれているからすぐわかる。その名のとおり泡にまつわる商品が入っており、中にはめったに手に入らない珍品が紛れていることもあるというから、まさに福袋、いやそれ以上のお値打ち袋だ。
泡袋を買おうと長蛇の列に並んでいたら、驚嘆の声があがった。
「すごい! 日本で最初に造られた幕末の麦酒だって。これはかなりのヴィンテージものだ」
泡袋を購入したひとが、その場で中身を確認したようだ。
周りからは「おぉ~」とどよめきが澎湃としてわき起こり、待っている間も期待が泡のごとく膨らんでいく。
いよいよ順番が回ってきた。泡袋を手にすると福袋より値段は高かったが、躊躇なく代金を支払った。
一目の付かないところで泡袋を開けてみると江戸初期の慶長小判が大量に入っていた。
これは泡袋にごくまれにあるといわれている「泡銭袋」と呼ばれる超激レアものだ。
その他
公開:24/08/10 06:30
百貨店 福袋 プチプチ 幕末 麦酒 ヴィンテージ 江戸 慶長小判 泡銭

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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