「門限」「キク」「ピアス」
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ちょっと遅れたかな、と思ったけど、ちゃんと門限通りに帰れそうだ。彼ぴまだいいじゃんとかいって引き留めようとしたけど、わたしは鞄で顔をぶん殴った。そんなにつよくぶったわけでもないのにいってえ、とか言ってうずくまり、わたしは無視をしてバスに飛び乗った。窓際の席に座るとバスが発車した。外を見ると彼ぴはまだうずくまっていた。だんだん遠ざかる彼ぴを見ながらちょっと悪いことしたかなと胸が痛み、おそろいで空けた舌ピを唇で甘噛みした。彼ぴは右肩にキクのタトゥーが彫ってある。どうしてキクなのと尋ねると、自分ちの家紋だからと答えた。だったらわたしは葵のタトゥーを入れようかな、というと彼ぴはやめとけ、といった。だから内緒で入れた。お尻の左えくぼに入れたこれを彼ぴに見せる日がくるのだろうか。この紋所が目に入らぬか、って。バスは規則的に進み私の降りるバス停をコールした。わたしはブザーを押し、また彼ぴのことを考えた。
その他
公開:24/08/08 03:54
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