泡石箱

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彼から宝石箱をもらった。
箱を開けると「泡石箱」と記されている。
宝石じゃなくて「泡石?」蓋を開けると、ビー玉のような石が色とりどりに12個。取説を見ると、1月から12月の泡石らしい。さらに〈炭酸電池をセットしてください〉とある。炭酸電池? 単三電池ではないのか。それは梱包材の中にあった。それをセットして、1月の泡石に触れた。刹那、霧のような炭酸の泡が煌めきながら舞い上がった。柑橘系の香りがする。それぞれに、桜、花火、星、雪など季節を表現しているらしい。桜色の泡石に触れた。彼と出会った桜の季節。恋色の煌めきが舞う。あの頃の思い出が、泡に投影されていく……。
彼が家に来た。
「どうだった? 泡石箱、楽しんでもらえた」
「うん、素敵だった」
「それは盛り上げるためのリハーサルさ」
そう言って彼は小さな宝石箱を開いた。
そこには煌めくリング。
「結婚しよう」
私は炭酸の泡みたいに舞い上がった。
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公開:24/08/08 01:28
更新:24/08/24 21:46

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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