ホラーメン

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肌寒い真冬、通勤帰りに温かいラーメンが食べたくなって屋台に立ち寄ることにした。
見た目は普通の屋台だったが、着席すると雰囲気が重苦しい。
店主にラーメンを注文するも愛想がなく、顔色が冴えない。
数分するとラーメンが出てきたが、湯気は出ているものの、ラーメン鉢が冷たい。麺はどす黒く、メンマやチャーシューも見当たらない。スープの色もおかしく、変なにおいがするので、店主に尋ねると「今はやりの薬膳ラーメン」と言う。
一口啜ってみると味は普通のラーメンだった。スープまで飲み干して完食後、勘定を済ませて屋台をあとにした。
家路に向かいながら、ふと振り返ると先ほどあった屋台がこつ然と姿を消していた。
その夜、寝ていると金縛りにあった。どこからか「ホラーメン!」と言う奇声が聞こえてきてうなされた。
朝起きると汗でびっしょり。シーツに血のようなおどろおどろしい赤い文字で「ホラーメン」と書かれていて気絶した。
ホラー
公開:25/02/08 05:44
真冬 ラーメン 屋台 メンマ チャーシュー スープ 薬膳 金縛り

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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