名画でショート045『イーゼンハイム祭壇画』(マティアス・グリューネヴァルト)

この祭壇画は、いまでいうところのマルチビジョンである。４面からなる壮大なストーリーである。
この祭壇画は、イーゼンハイムの聖アントニウス修道院のために描かれた。聖アントニウス修道院は皮膚病の治療で有名で、大勢の患者が奇跡を求めてこの聖アントニウス修道院を目指した。聖アントニウス修道院を目指す旅人の絵もたくさん描かれている。
皮膚病に悩む患者たちは、きっと、この祭壇画を見た。
そして、キリストに克明に描かれた腫瘍を様子を見て、きっと、キリスト様も苦しみを共有してくださっているとの安心感を得た。
そしれこの祭壇が開かれるとき、内側からは明るい色彩の絵画が現れる。
きっと、この色は希望。きっと、この輝きは未来。もしかしたら、心理的な効果で奇跡が起きたのかもしれない。
この祭壇画で何人が癒されたのだろうか。
いまとなっては、だれも知る者もない。ただ、立派な祭壇画が残るのみ。